「なんかちょっとおかしいな」「今までできたことができなくなったきたな」など老いを感じると同時に認知症の不安や心配に悩まされていませんか。
加齢に伴う老いと認知症ではまったく症状が異なります。そして、そのポイントとなる症状を押さえているかどうかで、介護が必要かどうかも分かります。
認知症かどうかを不安に思っている方や身近な人の介護についてお悩みの方は、まずこの「介護が必要かどうか」というポイントを明確にしておきましょう。
本記事では加齢に伴う老いと認知症の違いが分かるように、特徴的な認知症状をまとめました。また、認知症かどうかが分かる「認知症チェックリスト」も紹介しているので、気になる方は是非最後までご覧ください。
介護職として10年以上、認知症介護やケアマネジャーとしての実務経験を積んだ筆者が、実際の現場で感じたことや公的な情報をもとに、初めて介護に向き合う方にも分かりやすくお伝えします。
介護が必要かどうかは日常生活が継続できるかどうかで決める

加齢によるさまざまな症状の衰えと認知症による症状には明らかな違いがあります。ここでは東京都福祉局の認知症チェックリストを紹介し、その具体的な症状の紹介・解説を行います。
認知症チェックリスト
認知症ではないかと不安のある方は、以下のチェックリストを参考にしてください。各チェック項目のできる・できないをチェックし、できないものが多いほど認知症の疑いがあるため、受診や専門機関への相談をおすすめします。
| チェック内容 | チェック | |
| ① | 財布や鍵など、物を置いた場所がわからなくなることがある | |
| ② | 5分前に聞いた話を思い出せないことがある | |
| ③ | 周りの人から「いつも同じ事を聞く」などのもの忘れがあると言われる | |
| ④ | 今日が何月何日かわからないときがある | |
| ⑤ | 言おうとしている言葉が、すぐに出てこないことがある | |
| ⑥ | 貯金の出し入れや、家賃や公共料金の支払いは一人でできる | |
| ⑦ | 一人で買い物に行ける | |
| ⑧ | バスや電車、自家用車などを使って一人で外出できる | |
| ⑨ | 自分で掃除機やほうきを使って掃除ができる | |
| ⑩ | 電話番号を調べて、電話をかけることができる |
参照:東京都福祉局公式サイト(最終確認日2026年7月20日)
認知症が疑われる初期症状とは

年をとったからできなくなったのか、認知症なのかを見分けるのは難しいよね。

そうだね、はっきりとこれが認知症だってわかればいいけど。どんなことが認知症に当てはまるのかが分かっていれば対処の仕様もあるよね。
そうですね。円ちゃんとドル子さんが言うように、認知症と加齢による症状であることを見分けることは、家族であってもなかなか難しいです。
ここでは、認知症の初期症状ともいわれる特徴的な状態をピックアップします。これらは認知症の中核症状とも呼ばれ、加齢とは違う、代表的な認知症状でもあります。
認知症の中核症状①ひどい物忘れ(記憶障害)
認知症の物忘れの特徴として、「体験したこと自体を忘れてしまう」ということがあります。その日体験した記憶がすっぽりと抜けてしまったような状態なので、忘れているという自覚がないことがポイントです。
- 体験したこと自体を忘れてしまい、自覚がない
- 話したことを忘れるので同じ話を短時間に何度も繰り返す
- 同じものを何個も買ってきてしまい、ダメにしてしまう
- 食事をとったことを忘れて、家族に食事をさせてもらっていないと訴える
- ものを置いた場所を忘れてしまい、誰かに盗られたなどの被害妄想が出てしまう
認知症の中核症状②判断力・理解力の低下
認知症では、ものごとを正確にとらえることが困難になってきます。そのため、各場面で正しい判断ができなくなることから、重大な過失へとつながることもあるため注意が必要です。具体的には以下のようなことがあります。
- 小銭の計算が難しくなりお札ばかりを使う(お金の支払いがうまくできない)
- 信号を渡るタイミングを間違え、赤信号で渡ってしまう
- 自動車の運転でミスが増える
信号を渡るタイミングが分からないというのは、脚力が衰えているのに黄色信号で渡ろうとする、青信号になってもなかなか足が出ないなど。これらは判断力の低下から現れます。
また、買い物のシーンでは、言われた金額に見合う小銭やお札を支払えずに、お札ばかりを使ってしまうこともあります。

お財布のなかが小銭ばかりでおかしいなと感じたら、話し合わないといけないね。きっと本人も不安だろうし。

そうだね。とにかく怒らないようにしないと。本人が一番困っていることをわすれないようにしようね。一緒に買い物に行って様子を見てみることも大切だね。
認知症だけでなく、加齢によって脳の機能が衰えることでも現れますが、より顕著にみられること、また、取り繕ったり、噓をついたりする様子がある場合には特に様子を見ておくことが大切です。
認知症の中核症状③時間や場所が分からない(見当識障害)
認知症のテストでも一番に聞かれるのが、「今日の日付」です。一般の人でも、急に聞かれると困ってしまうこともありますが、認知症の方の場合、日付だけではなく月や季節さえわからないということが多々あります。ほかにも日常生活においてさまざまな場面で苦労することがあるので、早めに気づいてあげることも大切です。
- 今日の日付がわからない
- 今の季節がわからない
- 日時の感覚がないため約束しても守れない
- ゴミ収集の日時を守れない
- 行き慣れた場所へたどり着けなかったり帰ってこれなかったりする
認知症の中核症状④着替えの順番や料理の手順が分からない(実行機能障害)
日常的な動作を計画立てて行うことが不可能になります。今まではできていたことが急にできなくなった、やめてしまった、といった場合には、実行機能障害が起きているのではと疑ってください。具体的には以下のようなものがあります。
- 料理は何を使って行うのか、どのようにすればよいかを自分ひとりで実行できない
- お風呂に入ろうと思っても、お風呂の入り方が分からない
- 洋服の着方、選び方がわからず、上下ちぐはぐなものを着ていたり、季節に見合わない服を選んだりする
認知症の中核症状⑤失行・失認・失語
認知症状の中核症状に、失行・失認・失語があります。それぞれ下の表に特徴をまとめているので、ご覧ください。
| 症状 | 特徴 |
| 失行 | 道具の使い方、衣服の着方がわからない |
| 失認 | 見ても触っても聞いても、脳で処理できないためそれがなにかわからない 自分が今どこにいるかわからない 自分の半身が認識できない(側空間無視) |
| 失語 | 言語機能(聞く・読む・話す・書く)が困難になる 認知症の種類により、2つのタイプがある |
これらの症状は、専門機関でも治療は難しいです。しかし、リハビリによってある程度の機能回復が見込まれる場合もあります。また、突然上記の
認知症状が進むとどうなる?認知症の周辺症状である問題行動とは
認知症の中核症状が進行すると、周囲の人たちと言い争いになったり、自分がおかしくなってしまったのではと、不安になったりすることで症状が悪化します。これを認知症の中核症状における二次障害、もしくは周辺症状(BPSD)とも言います。
環境を整えないかぎりは、悪くなる一方となり、専門家の対応が必要な問題行動が現れてきます。問題行動の具体的な例は以下のようなものです。
人柄・人格が変わる
認知症状が進むと、下記のように、それまで穏やかだった人が急に怒りっぽくなったり、終始イライラして会話ができなくなったりする様子も見られます。
- 意味もなくイライラして怒りっぽくなる
- 自分の非や失敗したことを認めない
- 攻撃的になりちょっとしたことで暴言・暴力が出る
- 他人の意見を聞かない
あきらかに人格が変わってしまうほどの顕著な症状が見られる場合、緊急性のある病気が発生していることも。ほかの周辺症状がないかどうかも確認して、早めに受診することをおすすめします。
私の経験ですが、施設に務めていた時に、担当させていただいた高齢の男性が急にほかの入居者さまへ意地悪な行為をしたり、暴言を吐かれるようになりました。職員が注意したところ、まったく聞く耳を持ってくれず、興奮気味に反論し、暴力が出そうになるなど、おかしな点が見られました。職員一同で会議後、家族へ連絡し受診したところ、硬膜下血種であったことが判明し、その後手術の運びとなりました。
不安感が強くなる
認知症は、脳の器質的な問題から発生するため、人によっては感情のコントロールが難しいことがあります。不安感が強くなると、以下のような様子が見られがちです。
- 小さな失敗に落ち込みやすくなる
- 外出がおっくうになる
- ひとりになることに怖い・寂しいという気持ちになる
自分の変化を受け入れられない、周囲の環境からのストレスなども加味されることで、強い不安や葛藤を感じやすくなり、うつのような状態を発症することもあります。
意欲の低下
認知症状が進むと、今までできていたことができなくなってしまうため、趣味としてやっていたことができなくなったり、今までのように面白味を感じなくなったりします。その結果、一日をぼんやりとすごしてしまいがちです。具体的には以下のような状態が見られます。
- 今まで好きでやっていたことをやめてしまう
- 一日中テレビばかり見て、ぼんやりしている
- 外見を気にしなくなり身だしなみを整えなくなった
また、生活への意欲が低くなり、今までは毎朝お化粧していたのにすっかりなにもしなくなった、起きたときのまま一日を過ごすようになったなど、外観の変化が顕著にみられることも。そのような場合には、一度専門機関へ相談してみることをおすすめします。
介護拒否:入浴拒否・食事拒否
ひとりでは生活できなくなっているのに、他人の手を拒否する傾向にあるものが「介護拒否」です。他者による入浴や食事といった日常生活のサポートを拒否・または受け入れてもらえません。
この理由の主な要因は認知症の中核症状である「見当識障害」です。
朝起きて洗顔する、食事のあとは歯磨きをするといった習慣がなくなる。不眠によって生活リズムや自立神経が狂ってしまい、さまざまなトラブルが出てきます。
食事拒否が明確に出現するのは、認知症中~後期とも言われています。逆に初期では、食べたことが分からず、日に何度も食事を行うなどの過食が進む傾向にあります。
入浴拒否もやはり認知症の中期に見られる症状です。これは、入浴の手順が分からなくなることから始まります。身なりを整える習慣も消失しているので、他者のサポートで入浴介助が行われることに強い拒否を示します。入浴ということが分からないので、何をされるかわからないという恐怖から他者のサポートを拒否します。
徘徊
認知症が進むと、出現する問題行動に徘徊があります。徘徊は昼夜問わずありますが、主に夜間が多いです。これは昼夜逆転や夜になると不安になるという心的な要因によって引き起こされるようです。
徘徊は周囲から見れば問題行動ですが、本人にとっては目的をもって行動しているため、周囲の言葉や抑えは効かず、鍵をかけても外に出て行ってしまいます。
また、誰かに伝言をして出かけるわけでもないため、家族からしたら突然いなくなってしまうので、夜間問わず探しに行かなければならず負担も大きいです。
暴力・暴言
暴力や暴言も認知症の進行によって引き起こされる問題行動のひとつです。「脳血管性認知症」によく見られる症状とも言え、脳のなかの理性をつかさどる部分が機能障害を起こすことで起こります。すぐにカッとなって大きな声を出したり、手が出てしまったりと感情的な行動に走りやすく、さまざまなトラブルにつながります。
感情のコントロールが難しいため、怒りだけではなく、悲しみや不安、恐怖といった感情も受けやすく、ささいなことで感情が不安定になりやすいです。
妄想・幻覚の訴え
認知症の種類によっては、妄想や幻覚などの症状が出る場合があります。具体的には以下のような訴えが聞かれます。
- 部屋の隅に女の子が立っている(幻覚)
- 壁にたくさんの虫が這っている(幻覚)
- お金を盗まれた(妄想)
- 家族のふりをしているけどあの人たちは他人で私を殺そうとしている(妄想)
この症状が出現する認知症は「レビー小体型認知症」に多く、記憶障害がないことから認知症精神疾患と間違われやすいです。「レビー小体型認知症」では、ほかにも手足に小刻みな揺れが見られるパーキンソン症状や、便秘や立ち眩み、発汗異常などの自律神経以上などの症状も見られます。
このような症状が見られたら、早めに専門医に受診しましょう。
認知症への早期対応でQOLを維持しよう
認知症は早く見つけることができれば、症状に見合った適切なサポートが受けられます。適切なサポートが受けられれば、本人はもちろん家族の不安や負担を減らすことができます。
そのため、まずは本記事で紹介した「認知症チェックリスト」を使って、認知症なのか、加齢による老いであるかをチェックし、介護が必要かどうかを見分けましょう。
認知症の初期症状では、加齢による老いと区別がつきにくく、結果として問題行動が起きてから家族がサポートに入りそのまま介護生活に突入する場合も多いかと思います。
しかし、認知症は進行性の病気であり、なかには適切な専門家たちのサポートが必要な症状もあるため、家族介護には限界があります。認知症に限らずですが、介護は家族が自分たちの生活を犠牲にしてまで行うものではありません。そこは理解していく必要があるでしょう。
もし今認知症の症状で家族が悩んでいる状態なら、早めの受診をおすすめします。認知症状が出ている本人が受診を拒否する場合は、地域包括支援センターに相談するなどして、専門家の支援を積極的に受けてください。
認知症のこれからはどうなる?現役世代は予防対策も大事!
厚労省の最新調査では、2022年度において認知症・軽度認知症を発症された方は、65歳以上の高齢者全体の約3割ほどに及びます。
2040年には3割を超え、2060年にはさらに増えるという予測データを見ても、これからの時代は認知症の予防や発症の遅延などに力を入れていくことが自分たちの生活を送るうえでも大切であることが分かります。
適度な運動やバランスの良い食事、質のよい睡眠、充実した余暇活動を楽しむといった生活習慣を作ることが大切です。
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認知症の初期症状「取り繕い」についてはこちらの記事をチェックしてください。もし家族に「あれ?おかしいな?」と思うようなことがあったら、早めの対応を心がけましょう。
✍️この記事を書いた人
miri
介護福祉士・ケアマネジャーとして10年以上介護現場で勤務。
認知症ケアを中心に多くの利用者やご家族を支援してきました。
このブログでは、介護の経験をもとに、介護や認知症、お金に関する情報を分かりやすくお届けしています。

