家族が認知症になり「どう接したらいいの?」「この対応で合っているの?」と困惑される方は少なくありません。今までのような接し方では上手くいかずお悩みの方も多いのではないでしょうか。
この記事では、認知症の方への接し方や避けたい対応、安心につながる声かけについて分かりやすく解説します。
介護職として10年以上、認知症介護やケアマネジャーとしての実務経験を積んだ筆者が、実際の現場で感じたことや公的な情報をもとに、初めて介護に向き合う方にも分かりやすくお伝えします。
この記事を読んで分かること
- 認知症の方への適した声掛けや対応方法が分かる
- 認知症の方への対応について重要なポイントが分かる
- なぜ認知症の方へ適した対応方法が必要なのかが分かる
認知症の方への対応は尊厳を守るために行うこと
認知症の方への対応方法に特別なことはいりません。しかし、認知症だからといって、「分からないから」「忘れるから」という間違った認識のもと、ぞんざいな態度をとったり、個人の尊厳を損なうような対応をとってしまうことは、間違ってもしてはいけません。
認知機能の低下により、「できないこと」が増えてきて悲しい思いをしているのは本人であることを忘れてはいけません。ここでは、そのような認知症の方の尊厳を守るために必要な対応方法について解説します。
認知症の方への対応には3つの「ない」を意識する
認知症の方への対応方法として意識したいポイントは3つあります。
- 驚かせない
- 急がせない
- 自尊心を傷つけない
引用:日本理学療法士協会|理学療法ハンドブック|シリーズ8認知症
認知症の人にとって、何かをするにも以前より「考える時間」が長く必要です。その原因は認知機能の低下によるもので、決して本人がそうしたくてしていることではありません。
周囲の人間は「まだできないの?」「また分からないの?」といった具合に、今までできていたのになぜできないのか、といった態度になりがちです。そのような対応ばかりに本人が慣らされてしまえば、自身の行動や言動に自信がなくなり、ますます状態は悪化します。
「認知症になると何もできなくなる」ということではない
「認知症になると何もできなくなる」ということではありません。時間をかければできることもあります。そのため、「早くして」と急がせることは悪影響です。
また、イライラした態度をとったり、大きな声をあげたりして、驚かせるようなこともやめた方がいいでしょう。
また、「できないから私がやってあげる」といった行為も、一見優しいようにも見えますが、本人の自尊心を損ねたり、ストレスを与えたりすることになる場合も。認知症の症状が悪化する可能性もあります。

自分の親だからこそ、「なんでできないの」言ってしまいそう!攻めてるんじゃなくて、悲しいんだよね。否定しているんじゃなくて「なんでできなくなっちゃったの」って思いだと思う。

そうだね。家族だからこそ強い言葉になっちゃうことってあるかも。「なんで、どうして」っていう気持ちなんだよね。でも子供と違ってできるようになるわけじゃない。だからこそ見守ってあげるっていう姿勢が大事なんだろうね。
そうですね。家族は「信じられない」「なんで」という気持ちを抱えているのと同様に、本人も同じ気持ちを抱えていることを忘れてはいけません。むしろできなくなっていくことが多い中で本人の喪失感も大きいです。
認知症の方とのコミュニケーションのポイント6つ
認知症の方とコミュニケーションをとる際には、可能な限り以下の6つのポイントを押さえておきましょう。
- まずは見守る
- 余裕を持って対応する
- 声をかける時は一人で
- 後ろから声をかけない
- 相手に目線を合わせて優しい口調で
- おだやかに、はっきりした口調で
- 相手の言葉に耳を傾けてゆっくり対応する
引用:日本理学療法士協会|理学療法ハンドブック|シリーズ8認知症
各ポイントについて、解説します。
まずは見守る
まず本人が何がしたいか、どんなふうにしたいか、といった様子を見守ることが大切です。この行為は、認知症のケアのポイントでもある「共感」「受容」に通じており、本人のペースにあったサポートを行う上でも重要です。
余裕を持って対応する
本人の行動や言動をまずはしっかりと見守って、次に行うことを余裕を持って対応(サポート)することです。サポートする立場の人が慌てていたり、本人が何をしたいかをわからないままサポートしようとしても十中八九上手くいきません。
認知症の方のサポートは、まずは見守りから、ということを覚えておくといいでしょう。
声をかける時は一人で
認知症の方に話しかける時は、一人で行います。これは、認知症ではない健常者の方にとっても同じですが、認知症の方は、「誰が話しかけてきたかわからない」ということがより顕著です。
また、話していることを理解する能力も低下しているので、複数の人が交互に話をしても理解することが難しく、会話の成立が困難になることも多いです。対応する人は一人と決めておくことも大切です。
後ろから声をかけない
後ろから突然声をかけられると、認知症の方は突然のことで驚きます。この「驚き」という感情は、認知症の方にとって良いものではありません。なかには、パニック症状が出てすぐには落ち着けなくなるという方もいます。
また、「驚いて怖い思いをした」という感情だけが残り、相手との信頼感がつながらなくなる恐れもあるため、注意が必要です。
相手に目線を合わせて優しい口調で
まず、相手に目線を合わすという動作は、認知症の方にとってとても大切です。今から私が話すよ、ということを理解してもらうことで、注意を自分に向けることができ、コミュニケーションしやすくなります。
また、優しい口調を心がけることで、相手にとって不安のない穏やかな状況で会話ができます。
おだやかに、はっきりした口調で
相手の目線に合わせてコミュニケーションを取り始めたら、優しいながらもはっきりとした口調で話すことが、相手の理解を促します。
また、認知症の進行によっては、会話が成り立たない場合もあるものの、このような姿勢でコミュニケーションをとることは、信頼関係を築く上でも大切です。
相手の言葉に耳を傾けてゆっくり対応する
相手の言葉に耳を傾けるとは、相手の話を最後まで否定せず、しっかりと受け止めながら聞くことです。介護の現場では「傾聴(けいちょう)」と呼ばれています。
認知症の方は、自分の思いや伝えたいことをうまく言葉にできず、不安やもどかしさを感じていることがあります。
そんなときに、相手の話を途中でさえぎらず、「あなたの話をちゃんと聞いていますよ」という姿勢で接すると、安心して話そうとしてくれます。
また、「この人は自分の話をしっかり聞いてくれる」と感じることで、信頼関係も築きやすくなります。
認知症の方とのコミュニケーションでは、答えを急がせたり、話を途中で訂正したりするのではなく、相手のペースに合わせてゆっくり耳を傾けることが大切です。

まとめ
認知症になったからといって、その人の人生や思い出がなくなるわけではありません。
理解し、寄り添ってくれる人がそばにいることは、本人にとって何よりの安心につながります。
もし自分の母親や父親が認知症になってしまったら、どう思いますか。
私は施設での認知症介護の経験から、そんな家族が戸惑いや不安を感じている姿や一方で献身的にサポートをされる様子を見てきました。
認知症になっても、その人は「その人」のままです。大切な思い出を一緒に振り返り、安心して毎日を過ごせるよう寄り添うことが、何よりの支えになると私は思います。
本記事では、認知症の方への接し方や対応方法について解説しました。不安や戸惑いを感じられている方の一助になれば幸いです。
合わせて読んでほしい記事はこちら
・認知症の初期症状「取り繕い」について知りたい方はこちら
・認知症チェックリストについて知りたい方はこちら
ほかにも介護についての記事を多数掲載しています。高齢者介護について知りたいという方はぜひ参考にしてみてくださいね。
✍️この記事を書いた人
miri
介護福祉士・ケアマネジャーとして10年以上介護現場で勤務。
認知症ケアを中心に多くの利用者やご家族を支援してきました。
このブログでは、介護の経験をもとに、介護や認知症、お金に関する情報を分かりやすくお届けしています。

