認知症の方におすすめの介護サービスについて紹介します。介護保険ではさまざまなサービスがあるものの、「認知症になると介護サービスは使えないのではないか」「認知症対応のサービスしか使えないんじゃないか」など、気になる方もいるのではないでしょうか。
認知症になったからといって、介護サービスが使えないということはありません。しかし、その人にあったサービスを利用することで、本人だけでなく家族の負担も減らせることになるでしょう。
本記事では、認知症の方が利用しやすいサービスについて紹介します。認知症介護は孤立しやすいとも言われています。過度な負担は、リスク因子が高く、本人の状態や家族関係の悪化につながりやすいです。ぜひ介護サービスを利用して、負担を軽減し、本人らしい生活や家族の支えの一助にしてください。
介護職として10年以上、認知症介護やケアマネジャーとしての実務経験を積んだ筆者が、実際の現場で感じたことや公的な情報をもとに、初めて介護に向き合う方にも分かりやすくお伝えします。
この記事を読んで分かること
- 認知症の方に合った介護サービスが分かる
- どのような介護サービスが選べるか分かる
- 認知症の方が介護サービスを選ぶ際のポイントが分かる
認知症介護には介護サービスの利用が必須

認知症介護では、介護サービスを積極的に利用しましょう。介護者が疲れきってしまう前にサポートしてくれる存在を作ることは、認知症介護において大変重要なポイントです。
認知症の方は自分がどんなことが大変かなどを訴えることも難しい場合があります。そのため、可能な限り早い段階からプロにサポートしてもらうことが、当事者や家族の生活を安定させることにつながります。
在宅サービスか施設サービスかを選ぶ
まず、在宅でのケアが可能か、それとも施設でサポートすることが適切かを検討します。
「自宅で生活をし続けたい」という場合は、可能な限りその希望が実現できるようサポートしてくれるサービスを選びます。
当事者が一人暮らしに限界を感じている、サービスを利用しても、当事者に危険がある、自宅での生活は難しいと家族が感じる場合には、施設入所も視野に入れてサービスを検討します。
どちらにせよ、当事者や家族にとって適切なサポートが受けられるようにサービスを選ぶことが大切です。
認知症の方は介護サービスの拒否感が強い?
認知症の方にとって、介護サービスの利用は必要性が高いと思われます。しかし、当事者がその必要性を理解できない、また、第3者の介入に強い拒否感がある場合は、サービス導入が難しい場合もあります。
認知症が進行すると、脳機能の低下から、家族と他人が見分けられなくなったり、言われたことが理解できなくなったりするなど、コミュニケーションの場面においても不具合が出てきます。つまり、「まったく知らない人に何をされるかわからない状態」であると考えましょう。拒否感が出るのは当たり前ですよね。
しかし、サービスを入れないと生活が成り立たないような場合には、必要性の高さからサービスを入れることが望ましいです。ケアマネージャーや介護サービスの担当者とよく話し合い、当事者の思いを受け止めながらも、希望の生活ができるよう支援を行うことが大切です。
認知症の方が利用できる介護保険サービスとは
認知症の方で介護度が認定されている方は、介護保険の全てのサービスを利用できます。ここでは、そのなかでも特に認知症の方のサポートに適したサービスをピックアップして紹介します。
認知症対応型共同生活介護(グループホーム)
認知症対応型共同生活介護(グループホーム)は、「認知症対応型」と名前がついているように、認知症の方に特化した施設型サービスです。以下、グループホームと記載します。
グループホームは、10人に満たない少人数で共同生活を営む施設型介護サービスです。可能な限り自立した生活が送れるように、認知症の専門知識を有するスタッフの見守り・サポートを受けられます。
グループホームのメリットは、認知症支援に特化していることから、自分のできることを行いながら日常生活を継続できることです。料理や洗濯、買い物など日常の家事をスタッフと一緒に行いながら生活します。
デメリットは、病院とは違い医師や看護師が常駐していないため、医療体制が整っていないことです。日常的な医療ケアが必要な場合や、共同生活がむずかしくなると退去の可能性があるため、注意しましょう。
認知症対応型通所介護(認知症対応型デイサービス)
認知症対応型通所介護は、名前の通り、認知症に特化したデイサービスです。認知症対応型デイサービスのメリットは、家にこもりやすい認知症の方が外部との交流を促し、適度な刺激を受けられることです。また、自宅での入浴が困難な方は、デイサービスで見守り介助のなかお風呂に入れます。
認知症対応の専門スタッフが対応してくれるので、安心して一日を過ごせます。サービス内容は、通常のデイサービスと同じです。
認知症対応型デイサービスには3つの種類がある
認知症対応型デイサービスには、以下の3種類があります。
- 単独型
- 併設型
- 共用型
単独型は、デイサービスのみのサービスを実施しており、独立した建物内もしくは民家などを借りて行っています。サービス事業者の特徴が出やすく、大人数でさまざまなレクリエーションを行うところもあれば、少人数でゆったりとした時間を過ごすようなところもあります。
併設型は、介護施設や病院内に設置されているタイプです。規模の大きな法人が運営していることが多く、医療的対応に強く、徹底したリスク管理に信頼がおけます。認知症状の進行により入所や入院などが懸念される場合に、相談がスムーズに進みやすいです。
共用型は、認知症対応型グループホームのユニットに通ってサービスを受けます。入居者と一緒に一日を過ごせるので、自分が入居したときのイメージを持ちやすいです。
訪問介護
自宅で暮らす要介護者・要支援者を介護士が訪問して、身体介護や生活援助といった支援を行います。内容は以下の通りです。
- 生活支援:調理、掃除、買い物、洗濯など日常の家事支援
- 介護支援:食事、入浴、排泄、着替え、移動など、直接身体に触れて介助を行う支援
- 通院乗降介助:介護職員が運転する車両への乗車や降車の支援
通院乗降介助支援は、車椅子や歩行器を使われる方への支援がほとんどで、病院や金融機関など、生活に必要な移動について行われます。乗降と入口までの移動支援であり、建物内部については、その建物のスタッフの支援であり、このなかには含まれません。
買い物や掃除などの生活支援、食事や排せつなどの介護、健康管理や衛生管理指導などの看護、リハビリ・入浴などを提供するサービスです。
自宅で生活し続けるためには、欠かせない支援と言えます。
通所介護
認知症対応型のデイサービスのように、さまざまな形態のサービス事業者へ通って、食事や入浴、機能訓練といった支援を受けます。
認知症対応型とは異なり、さまざまな理由で介護認定を受けた方が通われており、人数が多いです。にぎやかな場所が好きな方、多くの人とコミュニケーションをとりたいという方におすすめです。
短期入所生活介護(ショートステイ)
普段は自宅で生活している方が、週に数回、月に数回といった頻度で、施設で過ごすサービスです。施設では、栄養たっぷりの食事や見守り介助付きの入浴サービスを受けられます。
なかには機能訓練を行う施設もあるなど、サービス業者によってその特徴は異なります。
主な目的は、自宅での引きこもりや孤立化による状態悪化を防ぐこと、第三者との関わりによって適度なコミュニケーションを行えること、そして家族の介護負担の軽減です。家族が冠婚葬祭や仕事などの理由で、自宅介護ができないといった理由でも利用が可能です。
認知症の方が介護サービスを利用する際によくある質問
いざ介護サービスを利用しようと思っても、心配や不安があると二の足を踏んでしまったり、なかなか利用に至らないこともあります。認知症の方が介護サービスを利用する際によくある質問をまとめたので、ご覧ください。
「認知症対応」とついていない介護サービスも利用できる?

認知症になってしまったら、「認知症対応」を謳ってる介護サービスしか利用できないのかな。

そんなことないよ。「認知症対応」って謳っているのは、グループホームと認知症デイサービスだけだから。他のサービスも必要なら利用できるよ。

そっか、安心した。その二つしか利用できないのかと思ったよ。自宅で生活するには、ヘルパーさんとかが来てくれて助けてくれたら安心だし、便利な道具とかも借りたりできるって聞いてたけど、利用できるかどうかわからなかったから。

そうだね。介護に特化した道具は購入だけでなく借りることもできるものね。そういったサービスを紹介してくれるのもケアマネさんなんだよ。自分たちが分かっていれば、好きにすればいいのだろうけど、介護保険は知らないと難しいから。ケアマネさんに相談して、良いものを紹介してもらえると生活も楽になるかもしれないね。
そうですね。円ちゃんとドル子さんが言うように、介護保険にはさまざまなサービスがあります。認知症になってもすべての介護サービスの利用が可能です。
現に通常の通所介護においても、認知症を発症された方が多く通われていますし、そもそも「認知症対応」を謳っていない訪問介護でも、サービスを利用している方は多くいます。
しかし、「認知症対応」という言葉が付いている場合は、より認知症への理解が深い介護士が対応してくれて、症状に合わせた適切なサポートを行ってくれます。そのため、認知症の症状が進んでいて、通常のデイサービスでは本人の疲弊が心配だな、といった場合に選ばれることが多いようです。
サービスを選ぶ場合に迷ったら、担当のケアマネージャーや地域包括支援センターなどに相談してみましょう。本人に合ったサービス事業者を教えてくれますよ。
認知症介護を軽減してくれるサービスはある?
「認知症介護を軽減してくれる特別なサービス」があるかと聞かれたら、答えは「NO」です。それは特別なサービスではなく、介護サービスのすべてがそうだからです。
介護サービスとは、介護者の介護の負担を減らすことも目的のひとつです。そのため、どのようなサービスでも、プロの介護士たちが的確に対応してくれ、介護負担を減らしてくれるでしょう。
認知症の介護度はどれくらい?
介護サービスが利用できるのは、介護認定を受けた要支援・要介護者のみです。介護保険において、要介護度と呼ばれるものは7段階あります。いかに介護度とそれぞれの特徴をまとめたのでご覧ください。
| 介護度 | 特徴 |
| 要支援1 | 日常生活はほぼ自立。一部支援が必要 |
| 要支援2 | 身体機能の低下が見られ、介護予防サービスが必要 |
| 要介護1 | 身の回りの一部に介助が必要 |
| 要介護2 | 食事や入浴など日常生活で介助が増える |
| 要介護3 | 多くの日常生活動作で介助が必要 |
| 要介護4 | ほぼ全面的な介助が必要 |
| 要介護5 | 日常生活全般で常時介護が必要 |
特徴については一般的な判断基準を記載しましたが、下記の引用にもあるとおり、必ずしもこの基準がすべてではありません。
要介護認定は、介護サービスの必要度(どれ位、介護のサービスを行う必要があるか)を判断するものです。従って、その方の病気の重さと要介護度の高さとが必ずしも一致しない場合があります。
私の経験でもう少し詳しく説明すると以下のようになります。
初期の認知症の方で会話が成り立つものの、職員の顔や名前を覚えられない、物の使い方や次に何をすればよいかが分からない、一人暮らしに不安が出てきたいう状態で要介護1~2、会話が成り立たないものの、習慣的に行ってきたこと(家事など)はできるといった症状の方は要介護3程度。
会話が成り立たない、意思疎通が難しい、トイレに行くことができず、おむつを使用している、お風呂を見てもそれがなんだかわからないといった認知機能にかなりの低下が見られ、身体介助を要する場合には、介護度4程度が想定されます。
認知症は、初期の段階から要介護度が重く認定される傾向にあるといえます。それだけ介護や支援の必要性が高いとみなされるからです。また、進行が比較的早いといった点も影響がありそうです。
サービス利用にかかる費用はどれくらい?
ここでは主に居宅サービスにかかる各介護度の費用について紹介します。
以下が、介護認定を受けた方が、一カ月に利用できるサービス利用限度額です。
| 介護度 | 利用限度額 |
| 要支援1 | 50,320円 |
| 要支援2 | 105,310円 |
| 要介護1 | 167,650円 |
| 要介護2 | 197,050円 |
| 要介護3 | 270,480円 |
| 要介護4 | 309,380円 |
| 要介護5 | 362,170円 |
引用:厚生労働省|介護事業所・生活関連情報検索「介護サービス情報公表システム」
上記の表は、厚労省の公式サイトに掲載している「サービス利用者の費用負担等」のリストをもとに作成しました。2026年8月時点においての介護保険サービスの利用上限価格はこちらになります。
上記に記載している金額を超えるまで利用可能ですが、超過してもサービス利用は可能です。ただし、超過分は全額自己負担となるため、出費を抑えたいという方は、記載した金額内に収めるようにしましょう。
第2号被保険者でも利用できる?
40~65歳以下の第2号被保険者では、「若年性認知症」を発症された方は介護サービスの利用が可能です。これは、介護保険上では、「初老期における認知症」と記載されています。
ただし、介護保険サービスの利用には介護度の認定が必須のため、住んでいる地域の自治体に申請して要介護認定を受けることが必要です。
認定された介護度によって、必要な介護サービスを受けられます。
まとめ
認知症だからといって、すべてが理解できなくなるわけではありません。適切な介護サービスを利用し、周囲が本人の気持ちに寄り添うことで、認知症になっても自分の尊厳を大切にしながら、その人らしい生活を続けることはできます。
大切なのは、「できないこと」ではなく、「その人らしさ」に目を向けること。介護サービスを上手に活用しながら、本人も家族も安心して過ごせる時間を増やしていきましょう。
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ほかにも介護についての記事を多数掲載しています。高齢者介護について知りたいという方はぜひ参考にしてみてくださいね。
✍️この記事を書いた人
miri
介護福祉士・ケアマネジャーとして10年以上介護現場で勤務。
認知症ケアを中心に多くの利用者やご家族を支援してきました。
このブログでは、介護の経験をもとに、介護や認知症、お金に関する情報を分かりやすくお届けしています。
