「認知症になったら、何もできなくなるの?」「もし自分が認知症になったらどうすればいい?」そんなふうに思っている方も多いのではないでしょうか。
認知症はすべての人が同じ症状が出るといった病気ではないため、必要な対策方法はこれです!と明言もできません。しかし、認知症になった人が全員、病気を発症したらすべてのことを忘れてしまう、何もわからなくなるというわけではありません。
ここでは、介護のきっかけとしての「認知症」についてみていきます。すこしでも皆さんの認知症への理解が深まれば幸いです。
介護職として10年以上、認知症介護やケアマネジャーとしての実務経験を積んだ筆者が、実際の現場で感じたことや公的な情報をもとに、初めて介護に向き合う方にも分かりやすくお伝えします。
👤 この記事を書いた人
- 介護福祉士
- ケアマネジャー
- 介護職歴10年以上
- 認知症介護の実務経験あり
- 現場経験と公的な情報をもとに執筆
認知症に気づくきっかけは?

お父さんとかお母さんが認知症になったら分かるのかな?

どうだろう。物忘れと認知症の線引きがむずかしそうだよね。

こんなことをしていると認知症かな、っていうポイントが分かるといいんだけど。

そうだね。そういうチェックリストみたいなものがあると分かりやすくていいね。
でも最初は本人のほうがつらいって言うから、はっきりと指摘するのは難しいかもしれないね。
円ちゃんとドル子さんが話している通り、認知症の初期症状は加齢による物忘れとの違いがはっきりしないということもあり、難しいかもしれません。
また、物忘れがひどくなってきたり、生活に支障が出てきたりすると、取り繕い行動とも呼ばれるものが多く出現します。
認知症における取り繕いで最も多いのは、実際に忘れていたり、意欲低下で行わない事柄について、別の理由付けをしてやり過ごそうとすること
認知症状に伴う取り繕い行動の例
認知症状に伴う取り繕い行動とは、次のようなものです。
- ご飯を食べていない:さっき食べたでしょ、という家族の言葉に、「年を取って食が細くなってきたら食べたかどうかも忘れちゃって」などごまかそうとする
- 鍵や印鑑、財布などの収納場所がわからない:「大事なものだから片付けた場所を変えたのを忘れちゃった」「誇りが被らないように別の場所に置いた」
- 約束の日を忘れて出かけてしまう:「用事があった」「天気が良かったから散歩に出かけてしまった」
- 買い忘れが多い、同じものを複数購入する:「安かったから」「あげようと思ってたくさん買った」
「なにかおかしい」とは自分が一番よくわかっています。そんな自分に対して不安を感じ、「もしかして認知症かもしれない」ということを認めたくない、受け入れられないといった気持ちから、取り繕い行動が現れます。
まじめな方やプライドの高い方には、よりその傾向があるようです。取り繕い症状は、思考力が比較的保たれている初期によく見られる行動でもあります。
初期の認知症状に家族はどのように対応すべきか

うーん、あきらかにおかしいのに誤魔化されたりしたら、怒ってしまいそう。こっちは心配しているのにって。

分かるよ。私もその場所にいたら問い詰めて病院連れていくかもしれない。やっぱり心配だよね。
身近にいるからこそ、大事な人だからこそ、心配してしまうことは間違っていません。
しかし、否定したり問い詰めたりされると、本人の自尊心やプライドを傷つけてしまい、逆に強い不安や怒りにつながる原因にもなります。
まずは事実を受け止める、気持ちを受け止めることが大切です。「そうだった(そうな)んだね」と本人の言葉を一度受け入れること。問い詰めたり、話を深く掘り下げたりせずに自然と話題を変えるなどが有効です。
認知症状初期のトラブルとそれを防ぐ具体的な対策とは
しかし、薬の飲み間違えや忘れ、消費期限の切れた食物を捨てずにストックしているなど、健康を害するような危険がある場合は、具体的な対策を講じる必要もあるでしょう。
重要なポイントをピックアップし、下記に表にまとめました。気になる状況・環境などがあれば参考にしてください。
| 困った症状 | 認知症状 | 対応策 |
| 薬の飲み忘れ・量の間違い | 日時における見当識障害 | お薬カレンダーやお薬箱を設置:事前に決められた時間を割り振ったカレンダーや箱に、一度に飲む分量を設置しておく |
| 同じものを買い過ぎる | 記憶・判断・理解における見当識障害 | 買い物チェック表を作り、在庫を分かりやすくしておく |
| 冷蔵庫に消費期限切れのものが多く入っている | 記憶・判断・理解における見当識障害 | 定期的に中身をチェックする 目の前で処分などを行わない |
| 部屋の中がものであふれる | 遂行能力の低下 | 定期的に要るもの・不要なものをチェックし一緒に片づける |
「取り繕い」は症状の一部であり、本人が不安を感じているサインでもあります。問題行動としてとらえがちですが、本人に直接指摘することでストレスを与え、病状を悪化させる原因になることも。
可能な限り、「寄り添い、受け入れる」という対応が大切です。家族だからこそ難しい場合もあります。そのようなときは、信頼できる第三者に立ち会ってもらうなどして対応するようにしましょう。
まとめ
認知症は、「周囲の人との関係を変えてしまう病気」ともいわれます。
これまで当たり前にできていたことが分からなくなったり、大切な人の名前や出来事を思い出せなくなったりすることがあります。また、不安や戸惑いから、できないことを取り繕うような言動が見られることも少なくありません。
その姿を目の当たりにすると、「もう親は親ではなくなってしまった」と悲しく感じることもあるでしょう。
しかし、認知症になっても、その人らしさや感情まですべて失われるわけではありません。好きなものや大切な思い出、家族を想う気持ちが、ふとした瞬間に感じられることもあります。
取り繕い行動は、家族を困らせようとしているのではなく、自分でも混乱し、不安を抱えているからこそ現れる症状です。その背景を知ることで、見え方が少し変わるかもしれません。
認知症の人と接するときは、「できないこと」を責めるのではなく、「不安な気持ちに寄り添うこと」を意識してみてください。その積み重ねが、本人にとっても家族にとっても、穏やかな毎日につながっていくはずです。
認知症を理解することは、本人を理解する第一歩です。症状だけを見るのではなく、その人らしさに目を向けることで、家族の関わり方も少しずつ変わっていくでしょう。
認知症とひとことで言っても、その症状や困りごとは人それぞれです。このブログでは、家族が戸惑いやすい認知症の症状や対応方法について、今後も分かりやすくお伝えしていきます。ひとりで抱え込まないこと。身近な人や専門家に積極的に相談しましょう。
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